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バーを経営する無申告案件の税務調査…愛知県名古屋市の個人事業主
愛知県名古屋市でバーを経営している個人事業主の税務調査に立ち会いました。無申告の状態での税務調査です。バー経営も飲食業ですので、飲食業と同じような税務調査の流れになります。これからご説明するのは、この税務調査の経験をベースにお伝えします。税務署の職員との関係についても少し触れます。
【目次】
- 売上をどのように確定するのか
- 売上の推計方法
- 売上以外の論点は
- 税務署の職員との関係
- まとめ
1.売上をどのように確定するのか
無申告の場合、売上を確定するために必要な資料が残っていないことが多いです。実際に、私が立ち会った税務調査でも、売上伝票はあるものの、全て残っているわけではない状況でした。このような場合、何かしらのデータに基づき、売上を推計することになります。推計課税については、以下のコラムにまとめていますので、ご興味があれば確認してみてください。
売上の推定計算が論点となった税務調査-名古屋市のメンズエステ経営
1.売上の推計方法
今回のケースで、売上の推計方法はどのような方法が考えられるでしょうか。売上の大部分はお酒なので、お酒の仕入に基づき推計するのが一番実態に近いでしょう。お酒の仕入額とお酒の価格表があれば、それほど違和感のない数値に落とし込めそうです。他に合理的な方法がなかったことから、今回の税務調査では、調査官がお酒の仕入業者に反面調査に行き、資料を入手した上で、売上の推計を行いました。
2.売上以外の論点は
一人で経営しているので、人件費関連は全くありませんでした。そこで、主な経費を上げると、お酒の仕入(業者に反面調査に行っているので金額確定)、店舗家賃と水道光熱費、通信費(店舗の電話、ネットなど)、情報誌への掲載料、おしぼり代、通信カラオケ利用料、著作権利用料、おつまみや氷代などでした。ここでのポイントは、おつまみや氷代はコンビニで購入することが多く、精緻な金額をはじき出すのは難しかったのですが、それ以外の費用は基本的に銀行口座からの引き落としだったため、漏れなく経費として処理することが可能だった点です。経費は漏れなく計上することが大切ですので、本人が意識していた訳ではありませんが、主要な経費が証拠として残っていたのは、非常に助かりました。
3.税務署の職員との関係
今回は、税務署の職員との関係も非常に友好的でした。税理士がついている場合、意味不明な状況にならない限り、敵対的になることはほとんどありません。私が関与した案件でも、とてもイライラしたことがありますが、その理由は税務署の職員があまりに事業の理解というか常識がなさ過ぎたためですが、年に1回あるかないかです。
今回特に友好的だった要因は2つありました。1つは、税務署の職員が納税者に共感する部分があった事(勿論、無申告であったことではなく、プライベートの境遇で一致することがあった)と、税務調査の立会い前に、可能な限り、こちらで資料を準備しておいた点が挙げられます。前者についてはたまたまですが、後者はこちら側の選択次第です。具体的には、経費リストを作成したことです(おつまみや氷などは金額の確定ができないため、こちらに都合のよい合理的な方法で推計)。売上は仕入業者から入手したデータに基づき、推計せざるを得ないので、調査官にお任せ予定でしたが、経費部分はこちらでできる部分も多かったので、それを予め提出することで、調査官の負担を減らしました。1つ注意点としては、常にこちらで準備した方が良いとは限らない点です。今回は、こちらで準備した方が有利に運ぶだろうとの判断から、事前に時間をかけて準備しましたが、準備せずにそのまま臨んだ方が良いケースもあります。そこの判断は非常に難しいので、税理士と相談の上、決めてください。
4.まとめ
今回は、バーを経営する個人事業主の税務調査について取り上げました。別のコラムでもお伝えしたとおり、現金商売は、必ず売上を重点的に調査します。売上に関する資料があれば、その資料に基づき集計するだけですが、資料がない場合は推計課税になります。今回は、仕入業者の情報以上に合理的な推計方法がありませんでしたが、案件によっては、複数選択肢がある場合も考えられます。複数選択がある場合は、税理士が関与した方が必ず良い結果になります。是非、無申告の方で、売上を確定させる情報がない場合は、税務調査に強い税理士に相談されることをお勧めします。
また、以前取り上げたマッサージ店の税務調査と同様、バー経営についても現金商売ですので、無予告調査の可能性があります。現金商売の方は、是非、こちらをご覧いただき、対処方法を理解して頂きたいです。
マッサージ店の税務調査のポイントとは
予告なしに税務調査が来た場合の対処方法について