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法人の節税方法について…セーフティー共済など
法人の節税方法について、最後のコラムです。今後、紹介したい節税方法があれば、また紹介しますが。今回紹介するのは、多くの会社が採用しているものや、ちょっと変わり種のものを取り上げています。ネットで検索すると、他の節税手法も紹介されていますが、ここでは紹介しなくてもよいかなと思い、除外しています。これまで取り上げた節税はこちらを参照してください。
【目次】
- 経営セーフティ共済への加入
- 生命保険の活用
- 貸倒損失や棚卸資産等の除却・廃棄
- 将来への投資に対する支出
- 新規ビジネスを個人事業で開始
- まとめ
1.経営セーフティ共済への加入
有名な節税方法です(厳密にいうと課税の繰り延べですが)。本来の目的は、取引先が倒産した際の資金調達ですが、実際は、退職金原資の積立を目的として活用している会社がほとんどではないでしょうか。この方法はあまりに有名ですので、詳細は他のホームページにお任せするとして、ここでお伝えしたかったのは、退職金をどれ位貰いたいのか、退職金はどれ位であれば税務調査で否認されないかを考慮した上で、経営セーフティ共済の積み立てを行ってほしいという事です。例えば、社会保険料対策として、役員報酬を極限まで低く設定している場合、税務調査で否認されない退職金の金額もかなり低くなってしまいます。例えば、将来見込まれる否認されないであろう退職金が500万円にも関わらず、経営セーフティ共済で800万円積み立てても、あまり意味ないですよねという事です。
2.生命保険の活用
節税効果(これも厳密には課税の繰り延べ)が前面に出た保険の多くは、国税庁に蓋をされてしまいましたので、実際はそれほど活用できる機会はないと考えています。コラム執筆時点(2021/3/20)で、私が加入しようと思っていた逓増定期保険(節税メリットのある方法で会社のお金を個人に移転できる保険)についても蓋されそうな状況で、本件の国税庁の結論次第では、私自身が今後加入する保険はないかなと思っています。
私は、保険はあくまで何かあった時の保障を目的とするもので、主目的が節税は違うよねというスタンスですので、顧問先にも保障という視点で紹介しています。また、個人で加入している医療保険やがん保険を法人名義で契約しなおすことにメリットがあるケースや、既存の保険が本人の状況にマッチしていない場合にそれを解消するサポートも行います。
3.貸倒損失や棚卸資産等の除却・廃棄
回収不能な債権について貸倒損失を計上すること、販売不能な棚卸資産等を除却・廃棄することで、損失を計上する方法です。ここでお伝えしたいのは、計上するタイミングと税務調査への影響です。特に貸倒損失を計上した場合、税務調査の可能性がぐぐっと高まります。過大な利益が見込まれるタイミングで貸倒損失や在庫除却損を計上し利益圧縮すること自体はよいのですが、それに加えて、すぐに税務調査が来る可能性が高まる点も知っていてほしいというのがここでお伝えしたかったことです。また、貸倒損失は否認されやすい項目ですので、その点についても、どこかでお伝えできればと思います。
4.将来への投資に対する支出
節税方法で一番ダメなのは、お金が無駄に減る節税と考えています。税金を払う位なら、お客さんと飲み食いした方がよいと時々聞きますが、それって違うよねという話です。会社でも個人事業主でも同じですが、事業を継続する上で重要なポイントは、手元資金を厚くすることです。その視点で考えると、過度な飲み食いは、税金の支払い以上にお金が無くなるためダメです。そういう無駄遣いをするのではなく、将来への投資にお金をかけましょう。
皆さんの事業により異なりますが、公認会計士や税理士であれば、税務・コンサル等の能力を高めるための研修費、営業活動のためのホームページ制作費用(広告宣伝費)、新しい出会いのための接待交際費など、いくらでもあります。しかし、将来への投資は、多額になる場合もありますし(私のホームページにもかなりお金をかけています)、結局無駄になる場合もあります。そのため、どういう投資をするかについては、自分だけで検討するのではなく、顧問税理士等のアドバイスを受けることも有用です。
5.新規ビジネスを個人事業で開始
個人事業で開始するメリットは、所得税と社会保険の節約です。所得税については、法人から受け取る役員報酬は、給与所得控除のメリットを享受し、個人事業の所得は青色申告特別控除65万円受けることができる点です。こちらはそれほど金額的に大きなメリットではありませんが、社会保険はメリットが大きいです。社会保険の節約とは、役員報酬に対してのみ社会保険料が発生しますので、個人事業でどれだけ稼いでも、国民健康保険は払う必要はありません。これはかなりの節税効果があります。
注意点としては、個人と法人を明確に分けることができるかどうかです。明確に切り分けられない場合、税務調査で問題となる可能性がありますので、個人と法人を明確に切り分けられるよう、それぞれ別々のビジネスをやっているといった事が大切です。
この節税方法の1パターンがマイクロ法人です。マイクロ法人については別のコラムでまとめていますので興味のある方はご覧ください。
6.まとめ
法人の節税方法についてお伝えしました。以前お伝えした、社宅制度の活用、出張旅費規程の活用、親族への役員報酬については、実質要件と形式要件をしっかりと満たしたうえで、必ず実施した方が良いです。今回取り上げた節税方法についても、金額やタイミング等を考慮した上で、うまく活用して頂ければと思います。
節税で大切なのは、資金繰りとセットに考えることです。先ほど挙げた社宅・出張手当・役員報酬は、会社と役員をワンセットに考えると、実質的にお金が外部に流出せずに節税できるので、とてもよい節税対策です(従業員への出張手当は?といった細かい指摘は抜きにて)。今回取り上げた経営セーフティ共済・保険活用・将来への投資は、お金が出ていく節税(もしくは課税の繰り延べ)です。節税した結果、資金がショートしたというのは本末転倒ですので、資金繰りは必ず意識してください。ここも、顧問税理士をうまく活用するのが有用です。安くない顧問料を払っているのであれば、是非活用しましょう。